〈さまざまな「走る」がある〉
走ることはすべてのスポーツの基本と言えます。
走ることそのものを競うスポーツは陸上競技ですが、
陸上競技においても種目によって走りに求められることは異なります。
陸上競技の走種目では決められた距離をいかに速く走れるかを競いますが、
「短距離走」では短い距離を最大速度で走る極限のスピードが求められます。
しかしながらそのままの走り方やスピードで長い距離を走ることはできません。
つまり長い距離を走るに異なる走り方技術が必要になるわけですね。
また跳躍種目や投擲種目の助走においても、ただ速く走ったのでは踏切や投動作につながらず
良い記録を出すことはできません。
そこでは跳躍や投擲運動につながる「リズム」も重要な要素になります。
陸上競技では基本的には何にも邪魔されることなく走ることができますが、
さまざまな球技においてはボールや人の動きに対応して
方向や速度を変えながら走る必要があります。
何かに対応するためには様々な方向にも進めるような準備が必要で、
すぐに止まったり方向転換したりすることも求められます。
「走る」といっても様々な目的があるわけですね。
〈効率のよい「走り方」とは〉
様々な目的の「走る」がある中で、速く走るために必要な共通する部分はあると考えています。
それは自らの力を地面に伝えて体を効率よく前に進めることです。
力を効率よく地面に伝えるために重要なポイントの一つは「姿勢」です。
短距離走でも長距離走でも頭を上から吊るされるように背筋を伸ばし、
姿勢を良くすることが基本になります。
(クラスの最初のストレッチでも頭の上からまっすぐ吊るされるような伸びを取り入れています)
「骨盤と背骨をまっすぐにする」
と表現されることもありますね。
状態が腰から折れて前に傾くことで腰が引けると地面に力が伝わりにくくなります。
大きな力を発揮するには良い姿勢を保ちながら体の軸を前傾させ、
腰の位置を高く保って走ることが必要です。
一方、球技のように外界の環境(人やボール)に合わせて方向やスピードを変えたり
止まったりしなければならない場合は、腰を高く保ったままでは対応ができません。
ベースボール型の走塁のような場合には腰を低く構え、時には戻れるようにしなければなりません。
しかしながら疾走時には地面に力を伝えることは共通です。
長い距離を走るためには運動を長い時間持続させなければならないため、
大きな力を使わないことが求められます。
短い距離で大きなパワーを発揮する短距離走の動きと比べると体の前傾を少なく
地面を蹴る力や太ももを上げる高さを抑えることで歩幅(ストライド)も狭くなり、
エネルギーの消費を抑えることに繋がります。
球技の種目によっては短距離を最大の速度で走る力と、
ある程度長い時間走り続ける力の両方をバランスよく求められます。
それぞれに必要な動きを身につけ切り替えることが大切になるわけですね。
※〈走ることはすべてのスポーツの基本②〉へ続く